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フランス遠征を終えて

            井筒圭二郎

 このたび団長を快諾して以来、正直なところ、フランスでは英語がどの程度通じるのだろうか、事故なり、盗難なりにあわぬだろうか、親善試合ではボロ負けするのではなかろうか、食事には満足出来るだろうか、・・・不安とそれなりの期待の交錯した毎日を送りました。でもその場、その場で絵を書けば何とかなると心にいい聞かせて参りました。

 あの治安の悪いマルセイユ、大都市パリ、大英帝国ロンドン、・・・柔道の試合、合同練習に於いてお陰様で何の怪我も無く、心配していたスリ、置き引き、盗難等の被害に巻き込まれることなくスケジュール通り全行程をこなし、無事安全使命果たし帰国できました事は誠に喜びにたえません。

 九月十日大阪に出発に至るまで、特に大学の植村さん、結断式が実にスムーズにとり行われましたのは植村さんの尽力のお陰と感謝しております。その他種々の準備、各自自分自身の役割、分担、責任を十分に認識し、それを果たし、また学生一人一人が自己管理の出来るその純真な態度、言動をこの遠征をとおして拝見させていただきました。つね日頃の山崎先生の素晴らしい指導力、学生各自のハートをよく理解しその懐に入り込み、身近に接する姿勢、そしてある時は厳しく、ある時はやさしく、・・・等改めて本当に感謝致しました。

 マルセイユ市庁舎訪問では笹山一敏神戸市長の友好親善メッセージをロバート・ヴィゴローマルセイユ市長(市長不在でオルメッタ・スポーツ担当助役)に伝達し各自一生懸命親善大使としての役目を果たしました。

 マルセイユ市営ブガンビル道場でのフランス柔道選手との合同練習、親善試合、鈴木総領事公邸での心温まる歓迎レセプション、等、公式日程を無事こなすことができました。

 九月十四日(土)、甲南大学柔道部が他の体育クラブ、団体に先駆けて初めて猪熊校長率いるトゥレーヌ甲南学園(今年四月中学・高等学校開校)へ表敬訪問致しましたことは誠に意義深いものと思います。ここトゥレーヌではアンドル・エ・ロワール県代表選抜チームとの合同練習、親善試合、サンシール・ツール・ロワール市庁舎及びトゥレーヌ大学表敬訪問の日程を消化致しました。

 トゥレーヌ甲南学園の中・高の生徒と(女子も含めて)合同練習し甲南大学に入学したら必ず柔道部に入部する様に今から勧誘を致しておきました。

 心と心が通じ合えば、各地域・国の言葉の違い、風俗習慣、人種、教育、文化、歴史、宗教等の違いがいくらあっても何んら問題がないということ。

 柔道を志している素晴らしい人々、フランスの英雄ジャン・ポール・コーシェ(オリンピック同メダリスト)、フランス政府公認柔道教師、天理大出身の萩原伸久氏、英国のニューキャスルより自主参加したスティーブン、ジリアン、ロンドンのノーマン・フォスター、体重一二八キロのボーダ、・・・その柔道を愛し取り組む姿勢、人と人との出会いが如何に大切で重要なものかということ、他人の身になって物事を考え、それを思いやる気持ちを身につけるということ、その協調性、ハーモニーによって益々強い一つのチームを創り上げていけるということ・・・

 このたびの遠征をとおして全員色々なことを学び体験したものと信じます。

 次に、藤木先生、浅井先生、木村先生、中江先生、藤原先生、本当にご苦労様でした。確か九月二日頃よりもすでに中・高の始業式が始まっており、公私とも大変ご多忙のところ我が甲南大学柔道部のために参加いただき色々と心温まるご指導、ご鞭達を賜りまして本当にありがとうございました。この場をかりまして改めて厚く御礼申し上げます。

 特筆すべきは藤木・中江両先生による天下一品の「投の形」の演武披露は日本古来伝統の柔道の神髄をフランス柔道家及びそのファンに見せつけたのみならず、二つの親善試合前の緊張感を盛り上げ、ドラマタイズするのにふさわしい見事なものでした。

 また、神戸市、市長室、国際課、教育委員会、体育協会及び兵庫県柔道協会の関係各位、誠に絶大なるご支援、ご協力を賜りました。深く感謝致します。

 甲南大学柔道部OBの武井君、尾藤君、喜多君、上出君、皆様は現役の学生に対してまさに立派な卒業生の模範となる様な態度、気のくばり、心のこもった指導に終始し、またスティーブンに特にやさしく面倒をみていただきありがとう。私自身にとってこのたびのフランス遠征で色々なことを学ばせていただきました。実にさわやかで楽しい体験でございました。長い人生の中で実に素晴らしい充実した十二日間でした。皆様、ありがとうございました。本当に「柔道をやってよかった」と思いました。こんなに素晴らしい人々と知り合いになれたからです。ありがとうございました。メルシーボク・・・

 

 

 

後藤先生に教わった柔道

           三十八年卒 永井 郁

 昭和二十八年、当時後藤先生は紅白の帯を締めて、中学生に稽古をつけておられた。友達と柔道場の掃き出し窓からその様子を見ていた。数日後に、中橋章吉さん(故人)から入部の勧誘を受けて柔道部員となった。中一の頃は野尻君(中、高、大と共にけいこをし、全日本学生大会に出場)や一年生部員と姿三四郎のまねをしたり、プロレスの力道山のまねをしたりして、無邪気に柔道場を暴れまわっていた。後藤先生から柔道の基本動作即ち、受け身、姿勢、組み方、崩し、作り、かけ、体捌き等、技では、立ち技、固め技等を中学から大学卒業までの十年間に教えを受けた。紙面をお借りして、後藤先生から数多くご指導いただいたなかから、記憶をたどり、その一端を紹介させていただこう。

 一番始めに受け身を教わった。「柔道は受け身が大切じゃ、受け身をしっかりやるのじゃ。受け身がしっかり出来ておればのお、柔道は自ずと上達する。」といわれた言葉は今でも鮮明におぼえている。

 また、「後ろ受け身はのお、顎を引いて帯の結び目をしっかりと見て後へ倒れる。何回やっても畳に頭を打たないように稽古するのじゃ。」「明日からあそこで自分でやるのじゃ。」道場の隅っこで毎日毎日受身の稽古であった。後ろ受け身、横受け身、前方回転受け身などの受け身をしても頭を打たなくなった頃、後藤先生が手招きをされ「永井ここへ来い。」、上級生を呼ばれ、「永井を投げてやれ」背負い投げ、体落とし、内股、足払いの技を掛けられて受け身をする。上手くできた。

 大学を卒業するまでの間、「受け身」について、次の主旨のお話しをよく伺った。

 「投げ技を上達するには、投げられた場合、受け身が充分身についておれば、不安なく技が掛けられる。又、投げられても受け身が苦もなく出来るため、安心感があるので、正しい姿勢と正しい技で思い切った技を出して相手を攻めることが出来る。」

 「投げられて受け身をする。自分の足で起き上がる、この繰り返しが自分の体を鍛え体をつくる。」

 「稽古中は無理な姿勢で無理な技を掛けない、相手の技に掛ったら頑張らないで素直に投げられ、受け身をする。相手に投げられることにより、相手よりも素早く自分の技を掛ける努力をする。それがかなわぬ時は相手の技に投げられ受け身をする。」

 昇段するに従い、先生がおっしゃっておられる意味が何となく理解出来、手応えを感じながら、稽古に励んだことを覚えている。

 「受け身」が無事で来た。次の立ち技を教わる時、基本的な組み手と姿勢を教わった。「受け身」と「姿勢(自然体)」が初心者の時に教わったことが昨日のことのように思われる。

 「まず、自然体じゃ。自然に立った姿勢は、前後左右に強く、柔道では自然体が一番安定した姿勢である。いつもこのような姿勢で稽古をするのじゃ。」と自然体を教わった。

 又、「礼節をわきまえること、平素の修養を積むことが将来役に立つ。」等々後藤語録は果てしない。

  大学二年の夏、講道館へ行った。当時、吉松先生、醍醐先生は現役の第一線で稽古をされていた。呼ばれて稽古をつけてもらった。感激した。遠くから大滝先生に呼ばれた。「君は甲南か?」と聞かれ、又、「後藤素直先生はお元気ですか?」と云われ、講道館のえらい先生が後藤先生のことをよくご存知なので、先生の偉大さを改めて深く認識した。

 稽古衣を着て柔道が出来る間は短い、しかし、多情多感な時期に体得したものが、その後の私の人生に数多くの収穫をもたらし、先生に教わった様々なことが、今も体内に脈々と流れている。

 

 

私と甲南大学柔道部

            藤木 崇博

 私が天理大学を卒業し、神戸市教員として上野中学に赴任した20年前、当時教員チームは甲南大学によく練習に寄らせてもらった。重量級の選手もかなりいて、なかなかいい練習ができていたように思う。

 岡本の神戸商業高校の近くに道場があった。同じ建物の中に柔道場と剣道場があり、仕切りがなかったので剣道部が時々、勢い余って畳の上に飛び込んだりした。

 私は勤務三年目で市立御影工業高校に転勤になり、甲南大学道場とはより近くになったため週に幾度となく練習にお邪魔するようになった。高校勤務になったので御影工業高校柔道部の部員を連れ、練習試合なども時々お願いした。学生たちは嫌だったと思う。

 現、報徳学園高校監督の光本先生や、雲雀が丘中学校監督の野中先生が主将を務められていた。私自身も現役選手だったので、学生と練習するのが楽しくて仕方がなかった。

 彼らの後、部員数がかなり減り練習にも困っているようだった。

 現在、吉本工業株式会社勤務の橋本君(天理高校OB)が主将をしていたころが一番苦しかったのではないか。

 山崎先生が赴任してこられたのが、ちょうどその頃だったと思う。おそらくあのころの柔道部を見て愕然としたことだろう。いろんな相談を受けたことを覚えている。

 それから道場が今の本山南中学の場所に移転、山崎先生の若さと情熱により部員数も徐々に増え、現在の六甲アイランド道場に移ったころには県下優勝はもちろん、関西大会でも上位を伺うような実力をつけてきた。

我柔道部も良くかわいがっていただきありがたく思っている。

又、昨年九月には甲南大学柔道部フランス遠征に副団長として参加させていただき、学生諸君と寝食を共にし、諸君の柔道に打ち込む熱心な姿勢に感じさせられた。学栄はこうあるべきだと思う。

 これからの甲南大学柔道部に臨むことは、関西、全国で上位を狙うチームになってほしいのは勿論のこと、質実剛健でしかも今の雰囲気を失わないでほしいと思う。

 青春には一途に打ち込むものが必要だ。若いエネルギーを何に傾けるか、みんなはそれを柔道に求めたわけで、それは素晴らしいことだ。

 私も人生の半ばをほぼ越えようとしているが、今まで生きてきた中で柔道を通して学んだ事柄が、人生の生き方や社会生活での問題などを解決するのに大いに役に立っている。それに何といっても練習で養われた、強靭な体と精神力は何物にも変えがたい。

 「何のこれしき、あの苦しい練習に比べたら乗り越えられぬわけがない。」とよく思ったものだ。

 学生諸君、今は柔道と学問。それに遊びだ。青春を燃やせ!

 

 

水急不流月 

植村 亮介

甲南学園柔道部創部65周年・甲南大学柔道部創部40周年を迎えられたこと、誠におめでとう存じます。

岡本柔友会会長から、パーティご案内を頂戴して、甲南学園柔道部の歴史の深さをつくづくと感じております。

昭和50年、甲南大学に事務職員として奉職した私は、高校時代、父や兄の柔道着姿にあこがれて始めた柔道が縁で、山崎先生がこられるまでの間、甲南大学柔道部の監督として6年ほどの期間ではありましたが、甲南大学柔道部員と共に汗を流し、試合においては、いかにすれば選手が勝ってくれか考えながら指導したこと、学生の個々の顔が、走馬灯の如く思い出されます。甲南大学柔道部の歴史からみたわずかの期間でしかないかも知れませんが、この6年は、私にすばらしい人生経験の場をあたえてくれましたので、心から感謝しております。

さて、甲南大学柔道場の中央に、甲南学園柔道部の創設者である後藤素直先生が「水流不流月」とかかれておられます。毎年春、新入生の入部と卒業生の出入りに伴い、部員の(水)の変化はありますが、先輩達が柔道場で培われた柔道の精神(月)である「精力善用」・「自他共栄」は、甲南大学柔道部員に脈々と流れ続けております。

現在、大学の入試制度には、今までの一般入試試験に加え、個人が持っている特性を活かしたスポーツ推薦制度や、指定校推薦によって入学できる制度が取り入れられております。これによって、柔道部員の中にもすばらしい技量を持った学生が入学しております。時代の移り変わりは年々激しくなってきておりますが、学生個人の努力、山崎先生のすばらしい指導、OB諸氏の絶大なる声援があれば、甲南大学柔道部は、益々発展すると確信しております。

甲南大学柔道部の今後の検討と活躍を、心からお祈りします。

 

 

「六地蔵」

           昭和三十九年卒 松田 裕

 人の心の中とは、いやはやわからないもので、この人が、と思う人が非常に怒りっぽかったり、ごう慢であったり、亦逆に思いがけなく大層心の広い人であったり、と全くわからないだらけ。

 他人様の観察とは、まことに面白いものですが、他人様から自分を見ると、やはり自分は他人様になるわけで、それなら少しでも良い奴だ、とか温厚で優しい奴だとか、と思われるようになりたいものです。

 仏教的な話しで恐縮ですが、私はいつも、六地蔵の心を自分の心の中にしまっています。

 墓地に行けば、よく六体のお地蔵様が並んでいるのを見かけますが、これが六地蔵で、人間の心の中に宿る六種の心を讃えたり、戒めたりするべく念じてくれているわけです。

 崇高な心を「天上」の心、人間らしく穏やかな心を「人間」の心、戦うための昂ぶった心を「修羅」の心、そして、「餓鬼」・「畜生」・「地獄」の心と続いています。

 世の中、考えられないような無残な犯罪が起こることがありますが、これらは、その時の犯罪者の心が、餓鬼・畜生・地獄の悪心のどれかのレベルに落ちているからです。

 自分の心の中に、いつも、この六地蔵の心を持っている事で、心のレベルが低下しかかった時に、素早く気付き、戒め、立ち直らせる事が出来るものと考えています。もし、よろしければ、六地蔵の心を皆様の心の中にしまっておいて下さい。

 天上・人間・修羅・餓鬼・畜生・地獄

合掌

 

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