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第一回ブータン柔道大会レポート

山崎 道洋

 

814日、ブータンで初めてとなる柔道大会を開催しました。今大会は私の勤めるPelkhil schoolRoyal Bhutan Army(以下RBA)、さらに3名のJICAの方々、総勢35名が参加しました。昨年末に1度大会を開催しましたが、参加者はPelkhil School生徒と数名のJICAの方々と参加者人数も規模も小さかった為に今大会を第1回ブータン柔道トーナメントと名称しました。会場として街の中心部にあるテコンドー道場をテコンドー連盟から借用し、柔道マットを敷き大会を開催しました。

今大会は3つの体重別のカテゴリーによる個人戦と所属団体別の団体戦を実施しました。さらに大会の合間に全参加選手によるデモンストレーションを、私が投げの形をそれぞれ披露しました。今大会に合わせて日本より大学柔道部の同期にブータンへ来てもらいました。彼には審判員と形の相手として、団体戦の助っ人として手伝ってもらいました。

さらにブータンオリンピック協会には大会のメインスポンサーとして運営に多大なるご協力を頂きました。大会の主賓として現ブータン王国5代国王の実弟であり、ブータンオリンピック協会会長のダショー・ジゲール氏に主賓としてお越し頂きました。さらに、来賓としてRBA, Royal Bhutan Guard, Ministry of EducationJICAからもお越し頂きました。

 

大会の開催に至った目的は柔道の宣伝にあります。5月にお会いした時にお話したようにブータンでの柔道の知名度は非常に低いものです。ほとんどのブータンの人達が柔道を見たことがなければ、聞いたこともないスポーツです。その為、大会を開催し、多くのブータンの人達の前で披露することは柔道を宣伝できる絶好の機会と考えていました。その為に多くの人が観覧出来るようにテコンドー道場で大会を開催しました。

さらに生徒達が練習の成果を披露する機会を作ってあげることも開催に至った目的です。ブータンでは柔道人口は私の生徒達を除くと0人です。生徒達にとっては対外試合が出来ない状況の中で日頃練習だけでモチベーションを保つことは困難であったと思います。実際に何人かの生徒達はこの理由で柔道を辞めました。しかし、人数としてはあまり多くはありませんがそんな中でも柔道を続けている生徒達もいます。彼らのうちほとんどが高校3年生であり、受験が控えている為に大会後からは勉強に専念しなくてはいけません。高校生活で勉強以外に真剣に打ち込んだものを最後に披露させてあげたいと思い、今大会の開催に至りました。

 

大会の結果は3つのカテゴリーの個人戦、団体戦ともにRBAの圧勝でした。彼らはこの大会に先立ち、6月より始まった将来の柔道指導者育成プログラムによって選抜された20名の兵士達です。中には以前短期の柔道指導を受けた兵士もいますが、ほとんどの兵士が初心者です。彼らは普段から厳しい訓練で鍛えられている為に非常に高い運動能力を備えています。この指導者育成プログラムは3ヶ月という短い期間でしたが、毎日2回の厳しい練習にも耐え、驚くほどの成長をしています。技術的にはまだまだ低いものですが、それ以上に真剣に柔道に取り組む姿勢から私は彼らに大きな期待を抱いています。さらに兵士達のほとんどがまだ20代前半と若く、今後のブータン柔道を背負っていく人材であり、数年後には彼らの中からブータン人として初めての指導者が生まれることと期待をしています。

PELKHIL SCHOOLの生徒は体力的に勝るRBAを相手になかなか思うような結果は残せませんでしたが、全て生徒が一生懸命に競技してくれました。私がブータンに赴任してから1年間で感じたことはブータンの若者の特徴として嫌なことやきついことからすぐに逃げる傾向があるということです。継続性という面で少し欠けています。その為にスポーツだけでなく何か1つのことを成し遂げる際には、そこに至るまでの充分なプロセスがなく、結果だけを重視しているように感じてきました。私は生徒達には柔道を通じて何か1つのことを続け、努力する大切さを学んでほしいと日々思っていました。大会後の彼らの顔を見渡すと今大会と練習を通じてそれぞれが達成感のようなものを感じてくれたのではないかと思います。彼らは卒業後、海外の大学に行く生徒、国内の大学に行く生徒、就職する生徒とそれぞれで、全員が柔道を続けることは難しいと思います。それでもこの努力した経験が将来の糧として心の中に残ってくれればと思っています。

 

全ての参加者がベストのパフォーマンスを披露してくれ、内容に関しては非常に満足のいくものとなりました。JICAの方達も大会を盛り上げて下さりました。さらに大会の途中に主賓のジゲール氏と生徒による試合が急遽組まれるというサプライズがありました。こちら側としては全く想定をしていなかったことですが、試合を観覧されていたジゲール氏から直接柔道をしてみたいという話を伺い、急遽試合が行われました。また、私が試合前にジゲール氏に簡単な技の指導をさせて頂きました。初めて柔道を体験なされて非常に興味を持って下さりました。他の来賓の方達も初めて柔道を観覧され、同様に興味を抱いて下さりました。また、今後の人材の派遣や柔道の普及への協力を約束して頂きました。参加者全員の頑張りが伝わり、このような満足のいく結果に繋がったと思っています。しかし、

同時に今後に向けた課題が認識出来た大会でもありました。その1つとしてブータンでしっかりとした柔道の組織作りがあげられます。当初、今大会にはテレビや新聞の取材が来る予定でありました。BOCがメディアや宣伝の担当に当たってくれる予定でした。しかし、事前に携帯会社を通じて送信されるはずの宣伝メールも送信されず、当日もメディア関係者が大会に来ることはありませんでした。後日、交渉の担当者に直接話を聞くと別のBOC職員に仕事を委託したという返事が返ってきました。彼らも柔道の存在もほとんど知らないにも関わらずに大会に多大なる貢献をしてくれた為に責めることは出来ません。むしろ確認を怠った私の責任でもあります。それ以上に今後、柔道がブータンで普及していく上で連盟を作ることが必要不可欠と感じました。今まではPELKHIL SCHOOLのみでブータンでの柔道に関するあらゆる運営を行ってきましたが、今回のように学校規模を超えた大きな大会を開催する際に1つの学校のみで全てを運営することは限界があるように思います。現状として連盟の設立は不可能であったとして、将来の設立に向けての組織固めをする必要があります。柔道に理解のある方達との人間関係の築き、協力体制を得ることが現状での課題となります。

もう1つの課題としてブータンでの柔道の認知度を上げることにあります。大会に訪れた観客が想像以上に少なく、現在のブータンでの柔道の認知度の低さを再確認することが出来ました。軍隊や警察関係者の中では少しずつ上がってはきているものの一般の人達にはまだまだ浸透していないことを感じました。これは今後とも地道に活動していく以外に道はありません。さらに大会などを通じ多くの人に柔道を紹介していかなければいけません。

今大会を通じて少しの成果を上げ、多くの現状での課題を確認出来たことはブータン柔道としても個人的にも将来に向けて収穫の多い大会となったと思います。同時に今大会に開催に当たって協力して頂いたBOCJICAの方々には改めて感謝の気持ちを感じています。更には日本からブータン柔道に協力して頂いている団体や関係者の方々にも同じく深く感謝の気持ちを感じています。今大会で得たものを胸に今後ともブータンでの指導にあたろうと思っています。今後、ブータンでの普及の上でご協力をお願いさせて頂く事があると思いますが、その際は何卒宜しくお願い致します。

 

 

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